不動産売買契約「引渡し猶予」の売主・買主のリスク
不動産を売却して新居へ移る際、売主が知っておきたい特約があります。
それは「引渡し猶予」です。
今回は、売却の契約時に「引渡し猶予」を付けたほうがいい理由や、リスクもあることなどをご説明します。
不動産売却時、売主のリスクを軽減する「引渡し猶予」とは
「引渡し猶予」とは、売主が自宅の買い換えをするときなどに利用する特約で、決済の日に所有権移転登記をして残代金も受領するけれど、実際の引渡しは後日にすることを言います。
本来は決済日に売却物件を引渡しますが、この特約を用いることで、新住居への入居までの間、売主は居住を続けることができます。
【引渡し猶予の特徴】
引渡し猶予には、通常の売買契約と異なる点がいくつか出てきます。
まず売買契約前に事前の合意が必要です。また、買主が住宅ローンを組む場合、金融機関が認めない可能性があるため、事前に確認が必要です。
この特約は、売主が売却の決済と購入の決済を同日に行う際、当日に引っ越すことができないためもうけることが多いです。
猶予の期間は、通常3日~7日程度で設けられることが多く、不動産売買契約書残代金支払い日と引渡日を数日ずらします。
決済日に所有権移転の登記をしますが、猶予期間中の賃料は発生しないのが一般的です。
固定資産税や都市計画税、また管理費や修繕積立金など、通常は決済日に日割清算をおこないますが、引渡し猶予の場合は、引き渡し日を基準に清算します。
光熱費も引渡し日前までが売主の負担で、引渡し後は買主へ移るのです。
【売主のリスク】
万一、引渡しまでに自然災害などで建物が壊れた場合は、売主負担となります。
売主には善管注意義務がありますので、引渡しまで建物や設備の維持管理に注意しましょう。
引渡し猶予が買主に与えるリスク
引渡し猶予は、買う側から見ると、引っ越しまでに時間がかかるリスクや、新たな傷や汚れが付いてしまうリスクがあります。
この特約は、買主にはメリットはないため、きちんと取り纏めができる不動産会社をパートナーに選ぶことも大切です。
最後に
この特約は、どうしてもスムーズな取引を実現するためにやむを得ないときに設けるべきだと思います。
ただ、売主・買主・銀行が了承するのであればスムーズな取引を実現するために欠かせない特約にもなります。